【書評】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

学校教育について
この記事は約10分で読めます。

今回は、
オランダ在住の教育学博士リヒテルズ直子先生と、
哲学博士の苫野一徳先生が書かれた、

公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

を読んだので、印象に残ったところをピックアップしながら解説します。

・日本の学校教育に疑問を感じている方
・学校教育が嫌だった方
・不自由な感覚がある方
・今後の日本を心配している方

などにおすすめです。

最後までお読みいただくことで、

・日本の公教育の問題点に気づける
・教育のあるべき姿がわかる
・これからの生き方を考える上でのヒントになる

このようなメリットがありますのでぜひ最後までお読みください。

 

目次

 

①豊かに生きるオランダ人 / 忙殺される日本人

この本は教育先進国とも言われる
オランダの教育と日本の教育を比較しながら話が進んでいきます。

あらためてオランダの教育事情を聞くと
日本の教育がいかに遅れていて、
健全な人格形成をするのが難しいかがわかります。

そもそも社会の常識がまるで違うようです。

著者のリヒテルズ先生によると、

オランダの労働者たちは、
日本人のようにだらだら残業をしたり、
有給休暇も取らずに職場に入り浸ったりすることはありません。

(中略)

勤務時間とプライベートな時間との区別をつけ、
家族と過ごす時間を十分にとり、
趣味や友人との付き合いを通して気分転換をし、
ものの見方を豊かにし発想の転換を図る時間を確保し、
クリエイティブで批判的な見方を養い、
仕事をより意味のあるものにし、
仕事でも知的生活においても社会に貢献しながら生きることが、
オランダ人の理想とするところです。

こうした生き方・働き方を追求している大人たちは、
子ども達がガツガツ勉強だけに没頭することを好みません。

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

 

このように述べておられます。

ある統計によると、どうやら日本人は、
仕事を通して幸せを感じている人の割合が低く、
また、学ぶことも好きではありません。

日本の労働環境は世界的に見ても悪い意味で特殊で、
その大きな原因の1つは教育です。

子どもの頃にどういう常識を埋め込まれ、
どういう生活をしていたかによって大人になった時の働き方、
ひいては社会全体のあり方に影響を及ぼします。

 

リヒテルズ先生もこのように述べています。

それに比べて、日本はどうでしょうか。

(中略)

一日中勉強漬けになり、遊ぶ時間も眠る時間も奪われ、
家族や友人と交わる時間もない子どもたちに、
ストレスがたまらないわけがありません。

そういう生活が、
人間としての成長に歪みを生むのは当然でしょう。

学習とは、本来楽しいものであるはずです。

これからの社会がますます必要とする人間の
様々な想像力や批判的な思考方は、
学ぶことに喜びを感じられる環境の中で初めて育つものです。

しかし日本の子どもたちは、まだ生まれてほんの数年の、
幼稚園に通う年齢の時から、

「勉強とは一所懸命励むもの」
「勉強が他人より遅れたら人生に失敗してしまう」

という外からの強制と脅しの中で、
学ぶことの楽しさを奪われ、生きがいを見いだす上で大切な好奇心を摩滅させられているのです。

こういう子どもたちが大人になった時、
彼らが作る社会は果たしてどれほど
創造的でエネルギーに満たされたものになっているでしょうか。

そこに生きている人々は、
他者とともに社会に関わり、
問題解決に積極的に取り組んで行こうと思うようになるのでしょうか。

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

このように述べています。

私もリヒテルズ先生の意見に納得です。
長年日本の学校教育の中でモヤモヤしていた感覚を
見事に言語化してくださっているので
初めて読んだとき、非常にスッキリしました。

中学生の時からずっと

「日本の学校教育は心をおかしくする」

と思っていましたが、
リヒテルズ先生も明確に、

そういう生活が、
人間としての成長に歪みを生むのは当然でしょう。

と述べているので、
私だけの勘違いではなかったことにある種の安堵を覚えました。

リヒテルズ先生も本書の別の箇所で述べていますが、
高度経済成長期はこのような教育でも
ある程度の合理性がありました。

ものづくりの時代・工業の時代であれば、
個性を無視した均質な人材を育てることでも
生産性を高めることができたからです。

しかし、これからの時代は工業ではなく、
情報や知識の時代です。

決められたことを決められた手順でできる能力よりも
今後はよりクリエイティブな能力が求められる時代なんですね。

そのような時代に、

・勉強に対するネガティブな感覚を作ること
・歪んだ競争意識を植え込むこと
・歪んだ人格形成をしてしまうこと

このようなことをしていてはこの国に未来はありません

幸せでないだけでなく、
生産性の観点から見てもよくないのです。

教育が持つ本来の目的に立ち返って
それに沿った指導が必要なのです。

表現がきついかもしませんが、

「奴隷・社畜」を大量生産するような
教育を続けていてはダメなのです。

心からそのように思っています。

 

では、教育が本来持つ目的とは何でしょうか?

これについて続いて解説をします。

 

②公教育の目的

公教育の目的については、
本書のもう1人の著者である
苫野一徳先生が「よい教育」についてこのように述べておられます。

 

すべての子どもたちに「相互承認」の
”感度”を育むことを土台に、
各人が「自由」になるための”力”を育む教育。

そしてまた、そのことを通して、
社会における「自由の相互承認」の原理を
制度的に実質化していける教育

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

とのこと。

私なりにまとめなおすと、
よい教育とは・・・

私たちが本来もつ、
「自由(生きたいように生きたい)」
という願望を尊重し、
それと同時にお互いがお互いの自由を
承認し合える仕組みの中で育てること

と解釈しました。

一言で表すと、
「自由と自由の相互承認」
の原則を土台にしている教育が
本来の目的に適っているということです

 

また、苫野先生は、

本質(目的)論なき教育論は、
それぞれがそれぞれの思いや信念を主張し合うだけの、
ひどい混乱や対立を招きかねないのです。

【引用】公教育を一から考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

このように述べています。

そもそも教育の目的とは何か?
教育の本質とは何か?

ということが整理されていなければ、
みんなで力を合わせてより良い状態を
作ることができないということです。

このような考え方は
他のことにも応用可能な重要な考え方です。

 

個人の人生で言えば、

「人生哲学」
「大切にしたい価値観」
「人生のゴール」

こういった本質や目的が明らかになった時に初めて、
具体的にどうすればいいかということが見えてきます。

会社などの組織も「理念」が明確になれば、
その理念を実現するために経営をすることができます。

それと同じで教育も「本質」や「目的」が大切なんですね。

 

多くの親は、
子どもに偏差値の高い学校に行かせて、
いい会社に就職させ、安定した給料をもらえる立場にする・・・

これを「自立」と思っている人が多いかもしれません。

しかし、これはレールに乗せているだけで
本当の自立ではありません。

学校の教師も塾の先生も親もみんな
教育の本質的なところを忘れて
ただひたすら権力者側が準備したレールに
子どもを走らせることしか考えていないのではないでしょうか?

特に教育現場で働いている人は、
このようなことを考えてしまうと、
心に矛盾が生まれ、精神的に崩壊するため、
思考停止に陥っているのではないでしょうか?

ただ、本書によれば、教育現場で働く先生方も
非常に不自由な環境を強いられているとのことなので、
心にゆとりがなくなっているだけなのかもしれません。

 

実際のところはわかりませんが、

とにかく今までの常識が今後も続くなら
日本という国はますます世界に置いていかれるでしょう。

そして、経済的にも心の豊かさの面でも
どんどん厳しくなるのではないかと危惧しています。

 

 

③教育の自由が保証されている世界

また、この本を読んでいて驚いたことは、
なんと、5〜18歳までの

公立・私立の教育費が無償

ということ。

公立は分かりますが、
私立まで無償というのはすごいですね。

本書によれば、

国からの公教育費は、
毎年生徒1人あたりの費用(教員給与、教材費、設備維持費、研修費その他を含む)
が計上され、学校ごとに生徒数分の額が支給されます。

これにより、公立校、私立校のいずれを選んでも
学費はまったく無償となるため、
保護者や子どもには多数の選択肢が保証されることとなります。

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

とのこと。

また、選択できる学校の種類も豊富です。

モンテッソーリ、ダルトン、イエナプラン、
フレネ、シュタイナーなどの教育は、
みな外国で発祥したものでありながら、
オランダにたくさんの学校があり、
しかも他の学校と同等の公教育費を国から保証されています。

自治体によっては、
こうしたオールタナティブ教育を
公立校として運営しているところすらあるのです。

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

 

オランダで、「教育の自由」によって、
多様な教育理念に基づく学校が公教育費で運営され、

子どもや親が自分にとって
最もふさわしいと思える学校を
選ぶ自由が保証されていることは重要です。

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

とのこと。

「日本の教育は個性を潰し、画一的だ!」

といった批判はよくありますが、
オランダの教育事情を知れば知るほど
日本の教育が非常に画一的で不自由な世界かが分かりますよね。

 

 

④個人が尊重される世界

日本では先生が大勢の生徒に対し、

「お前ら!静かにしろ!」
「今からこうするぞ!!」

といったことは日常茶飯事ですが
これも日本の常識にすぎません。

本書によると、

モンテッソーリやダルトン、
イエナプランなどの学校では、
教師たちは、教室にいる子ども集団全体に
大きな声で一斉に話しかけることを極力避けます。

一斉に大きな声をかけると、子どもたちは、
1つの個性をもった個人として尊重されることがなくなり、
場合によっては、子どもは威嚇されたと感じ、
安心して学びに没頭できなくなるからです。

【引用】公教育をイチから考えよう リヒテルズ 直子,苫野 一徳 (著)

このようにあります。

初めて読んだとき、目から鱗が剥がれ落ちました。

1人の教師(管理者)が
大勢に一斉に声をかけることは日本では当たり前すぎて、
問題があることに全く気づかなかったからです。

オランダの全ての学校がそうでないかもしれませんが、
日本の感覚とはまるで違うようですね。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

日本の学校教育のやばさに気づいていただけたでしょうか?

日本の若者の自己肯定感が極端に低いのも、
若者の死亡原因トップ1位が「自殺」であるのも
歪んだ教育による影響が大きいのではないかと思っています。

また、今回この本を取り上げたのは、
あなたの心を縛るものを取り除くためです。

日本の教育が全て悪いわけではありませんが、
内面的に自由に幸せに生きるためには
過去に受けた教育の問題点に気づく必要があります。

日本の学校教育に対して
憎しみや怒りを強めていただきたくはありませんが、
時には批判的に見るようにしてくださいね。

そして、自由に自分らしく
生きられるようになるきっかけとなりましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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